Vol. 1 チョウチンアンコウ類のルアー

深海魚通信

みなさん、こんにちは。『深海魚―暗黒街のモンスターたち』『深海魚ってどんな魚―驚きの形態から生態、利用―』を執筆しました、尼岡邦夫です。

今日からブログを始めます。
よろしくお願いします。

第1回目は、【チョウチンアンコウ類のルアー】 についてです。

講演会や出前授業などで「深海魚を知っていますか?」と質問すると、まず名前が挙がるのがチョウチンアンコウです。チョウチンアンコウ類は頭の上から1本のサオを伸ばし、その先に付いたチョウチン(ルアー)を光らせ、集まってきた小動物を食べます。このサオやルアーは、種によって様々な特徴があります。そのため、サオの長さやルアーの形などを見ることで、種を査定することができます。

おもしろいサオとルアーをもったチョウチンアンコウ類を紹介しましょう。


1) 光ファイバー式ルアー

 


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<チョウチンアンコウ>のサオはそれほど長くはないですが、比較的太くて丈夫です。その先には立派なルアーがあり、ルアーの先端から枝分かれしたたくさんの長いヒモが出ています。このヒモ、ただの飾りではありません。なんと光ファイバー式になっていて、先端がクリスマスツリーのように光ります。

ヒモの中を光が通って先から出る仕組みで、光源は発光バクテリア。バクテリアを海中から取り入れて、ルアーの中心にある部屋で培養しています。培養室は外に光が漏れないように黒い膜で覆われており、その内側は光を内側に反射させる層で裏打ちされて、光がファイバーへ上手く送り出されるように工夫されているのです。本当によくできていますね。


2) 長い1本サオ


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体の形が果物のビワや楽器のビワに似ていることからその名がついた<ビワアンコウ>は、非常に長いサオをもっています。思いっきり伸ばせば、体長と同じくらい伸びます。あまりに長いので、サオの後半部は体の中に収まりきれません。背中を突き抜けて、背びれの前方にできた袋状の鞘に入り、後方に飛び出します。折りたたみ式のサオをもたせてやりたいですね。


3) フライフィッシング式ルアー

© Pietsch & Orr 2007

© Pietsch & Orr 2007
私が命名した<デバアクマアンコウ>は、頭部が尖り、尾部が細長い奇妙な形をした魚です。口は反り返り、たくさんの牙状の歯が覗いています。この魚もビワアンコウと同じく、サオの後半部がうしろの鞘に収まります。サオの半分ぐらいのところに関節があり、前半部は上手く動くようにできています。さらに特徴的なのは、ルアーです。驚くべきことに、先端付近に釣り針がついているのです。発光するルアーで餌生物をおびき寄せ、この針で釣っているのではないかと考えられます。これはまさにフライフィッシングですね。


4) ハエトリソウ式ルアー

© Bertelsen & Struhsker 1977

© Bertelsen & Struhsker 1977

 

デバアクマアンコウよりももっとすごいルアーをもつ魚もいます。<ビックリアンコウ>です。私は驚いて思わずこの和名をつけてしまいました。ビックリアンコウのサオはそれほど長くありませんが、二又になっていて、八の字状のひげのようにぶら下がっています。ルアーを振って餌生物が集まってきたら、ルアーを頭の上にできた割れめから口の中に入れて、餌を口の中に誘いこみます。これで口を閉じれば、餌はもう逃げられません。植物のハエトリソウと同じ仕組みです。これこそ究極のルアーです。



© Bertelsen & Struhsker 1977

© Bertelsen & Struhsker 1977