Vol. 14 上目使いな深海魚?

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

このブログでもたびたびご紹介してきましたが、深海には特徴的な目をもった魚がたくさんいます。出目やカニ目などの目が飛び出した魚。つぶ目や奥目など極端に目の小さい魚。なかには目を完全になくした魚もいますし、逆に、体に対して極端に大きな目をもつ魚もいます。

では、この深海魚はどうでしょうか?

テオノエソ (ムネエソ科の仲間)

テオノエソ (ムネエソ科の仲間)

一見普通に見えますが、何かがおかしいですね。
第14回目は、目にちょっとだけ特徴があるムネエソの仲間のお話です。

上目使い?

体が左右に平たいムネエソ科の魚は、頭の側面の上の方に目があります。目の位置に限って言えば、魚としては特に珍しいわけではありません。
しかし、テオノエソ ( 上図 ) 、テンガンムネエソ ( 図1 ) 、トガリムネエソ ( 図2 ) などは、なぜか目が上を向いています。

図1 テンガンムネエソ

図1 テンガンムネエソ

図2 トガリムネエソ

図2 トガリムネエソ


上向眼で何を見ているの?

これほどまで上向きにこだわるのはなぜでしょうか。
この類の魚は体の腹面にたくさんの発光器が並んでいます。発光器の配列、大きさ、数は種類ごとに違い、そのため光の出方も異なります。上向眼は仲間の腹面から発射される光を下から見て認知し、群れをつくるのに役立っているのです。
調査船で網を引くと、同じ種がたくさん、まとまって獲れることがあります。『深海魚ってどんな魚』にもたくさんまとまって捕れたムネエソ、トガリムネエソ、テンガンムネエソの写真が載っています ( 図3 ) 。これは、これらの魚が発光を頼りに仲間を感知し、群れをつくっている証拠です。
また、ホタルのように雌雄によって光の点滅の間隔、光の色と強さなどが違っていれば、それを感知している可能性も考えられます。
図3 まとまって捕れたムネエソの複数個体。ムネエソの目も少し上かななめ上を向いている

図3 まとまって捕れたムネエソの複数個体。ムネエソの目も少し上かななめ上を向いている


上向眼? 横向眼?

同じムネエソ科でも、カタホウネンエソやホシホウネンエソは横向きです ( 図4・5 ) 。『ダーウィンが来た!』 ( NHK ) のヒゲじいから「ちょっと待った」がかかりそうですね。
同じように腹面に発光器をもっているのに、なぜ上向きではないのでしょうか。今のところ説明できません。将来、上向き群と横向き群の生態的な差異がわかるかもしれません。面白い研究テーマですね。
図4 カタホウネンエソ

図4 カタホウネンエソ

図5 ホシホウネンエソ

図5 ホシホウネンエソ


ムネエソ科以外にも、まるで上を見ているかのようでそうではない深海魚もいます。海底にすみ、平たい頭で、その背面に両眼をもっているコチ類、アンコウ類、カレイ類などです。普通に考えれば上向きの目をもっていそうですよね。でも、よく観察すると側方を見ているのがわかります ( 図6 ) 。
図6 アンコウ

図6 アンコウ


※出典
『深海魚ってどんな魚』