Vol. 18 アクマの口をもったビックリアンコウ

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

英名で、「狼わなの海の悪魔=Wolftrap seadevil」という恐ろしい名前の深海魚がいます。日本名は「ビックリアンコウ」。初めて見たときにビックリしすぎて、そのまま私が名づけました。
第18回は、そんな恐ろしいアンコウのお話です。

極めてめずらしいチョウチンアンコウ

ビックリアンコウは、日本では報告がなく、世界的にも、東太平洋の北緯9~32°のアメリカのサンディエゴ沖とメキシコ沖の水深3500メートルの深海から2個体しか報告されていない、極めてめずらしいチョウチンアンコウです。体長は37cmほどになります。

アンコウは一般的に、ゴロンとした丸っこい体つきの種が多いのですが、ビックリアンコウの体はとても細長いです。ただ、アンコウらしく口は大きくて、まるでがま口のようです。頭の上から大きな二股になったルアーがぶら下がっていて、それを振って餌生物をおびき寄せます。そしてここからの行動が、私が思わず「ビックリ」と名づけてしまったほど、特異でおもしろいのです。


ビックリアンコウ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )

ビックリアンコウ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )

バネ仕掛けで閉まる口

ルアーが出ている頭の先端の背面に切れ込みがあり、そこからルアーを下げて口の中へ差し込みます。そして、口を大きく開けて、口の中でルアーを振って餌生物を誘引します。口の中に入ってきた餌生物がどこかに触れると、その刺激でバネ仕掛けが付いているように、口が閉まります。袋のネズミとなった餌は逃げることができず食べられてしまいます。これは食虫植物のハエトリソウにどこか似ています。ルアーをもっているアンコウはたくさんいますが、これは究極のルアーと言えるのではないでしょうか。何故こんなことができるのか。誰に習ったのか。進化って本当におもしろいですね。
ビックリアンコウのエサのとり方 : 口の中にルアーを入れて獲物を誘うところ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )

ビックリアンコウのエサのとり方 : 口の中にルアーを入れて獲物を誘うところ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )

ビックリアンコウのエサのとり方 :  口を閉じたところ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )

ビックリアンコウのエサのとり方 : 口を閉じたところ ( Bertelsen & Struhsaker 1977より )


※出典
『深海魚ってどんな魚』