Vol. 23 最近のTVから

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

先日、日本テレビの「ザ!世界仰天ニュース」という番組で、俳優の鈴木亮平は深海生物がお好きだということを知りました。彼はミツクリザメ、ミツマタヤリウオ、スケーリーフットの3種を挙げて、なぜ面白いのか番組内で力説していました。これらの深海生物について私も質問を受けたので、彼の説明に少し補足しておきたいと思います。

長い鼻の下から口がガバッ

ミツクリザメは、長い平たい鼻をもち、その根元の下に口がついています。つまり口の上に長い庇を持った奇妙なサメです ( 図1 )。
世界中から報告されていますが、特に日本近海に多く見られ、相模湾、駿河湾、熊野灘、土佐湾などの水深430~730メートルから知られています。
エサを捕えるときは口を前方へ大きく突出させて、咬みつき、そしてそれを素早く引き戻すことができます ( 図2 ) 。食べたものを調べるとソコダラ類、ワニトカゲギス類、エビ・カニ類が多いため、大きな獲物を噛み取って食べるのではなく、口を突き出して捕まえて飲み込んでいることがわかります。歯が細長くて、内側に曲がっているのも、これらの獲物を捕まえるのに適しています。
ちなみに、ミツクリザメという和名は、明治時代の東大の箕作佳吉 ( みつくり かきち ) 教授に由来しています。
図1  ミツクリザメ

図1 ミツクリザメ

図2 ミツクリザメの口部 上 : ふつうの状態 / 中 : 上あごが少し飛び出したところ / 下 : あごが完全に飛び出したところ

図2 ミツクリザメの口部 上 : ふつうの状態 / 中 : 上あごが少し飛び出したところ / 下 : あごが完全に飛び出したところ


雄、雌、子ども、見た目がすべて違う

ミツマタヤリウオは北太平洋に分布し、日本では北海道以南の太平洋岸の水深400~1600メートルにすんでいます。雌は棒のように細長い体で、口は大きく、両あごに鋭い歯があります。下あごから1本のひげがぶら下がり、先端に白い発光器があります ( 図3 ) 。
体は雄よりも雌のほうが大きく、雄は雌の1/7ほどしかありません。また、発光器の位置なども雌雄で異なります。雄は目の下に大きな発光器をもっていますが、ヒゲがありません。雌にヒゲがあって、雄にない。人間とは逆の世界なのでしょうか ( 図4 ) 。
鈴木亮平さんが好きだといっていたのは、以前このブログでも紹介したミツマタヤリウオの子どもです ( Vol. 13「これって地球上の生物 ?」参照 ) 。『深海魚ってどんな魚』の表紙にもなりました。頭から長い柄がのび、その先に目がついていて宇宙人のようです ( 図5 ) 。実は、番組で使用されていたのは、私が貸したこの写真です。鈴木さんは、成長すると目の柄がだんだんと短くなり、頭の側面に収まるということを説明していました。そこに私がひとつ補足させていただきます。子どもの時になぜこのように目の柄がのびているのか。それは、視野を広くして、遠くのエサのプランクトンを早く見つけるためだといわれています。ミツマタヤリウオ ( 三又槍魚 ) という名前は、この子どもの頭部の形に由来しています。
図3 ミツマタヤリウオの雌

図3 ミツマタヤリウオの雌

図4 ミツマタヤリウオの雄と雌の体の大きさと発光器の比較 ( Beebe1934より略写 ) 上 : 雌 / 下 : 雄

図4 ミツマタヤリウオの雄と雌の体の大きさと発光器の比較 ( Beebe1934より略写 ) 上 : 雌 / 下 : 雄

図5 ミツマタヤリウオの子ども

図5 ミツマタヤリウオの子ども


奇妙な深海巻貝

スケーリーフット ( 鱗をもった足 ) は、魚ではなくて巻貝の仲間です。深海底の熱水噴出孔の付近に生息し、足は鉄の鱗でおおわれています。

太陽光によって光合成で作られた栄養に頼っている我々の世界と違って、化学合成で作られた栄養を摂取しています。


※出典
『深海魚―暗黒街のモンスターたち―』
『深海魚ってどんな魚』