Vol. 24 蛇と獅子舞

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

子供のころ育った田舎の家で、蛇が大きなネズミを飲み込んでいたところを見たことがあります。同じ蛇かどうか知りませんが、鶏の卵を食べているところも見ました。ネズミも卵も蛇の口よりもはるかに大きくどのようにして飲み込んだのか不思議でした。

深海にも、自分の口よりも大きな獲物を飲み込む不思議な魚がいます。その仕組みはどうなっているのでしょうか。

第24回目は、深海にすむ「蛇」と「獅子舞」のお話です。

蛇口

フウセンウナギ ( 図1 ) は蛇のような方法で獲物をとります。頭よりも大きな両あごをもっていて、上あごを垂直に立てて口を開きます。そのために背骨を直角に曲げることができます ( 図2 ) 。普通の魚では背骨は互いに強く結びついていて大きく曲げることはできません。垂直に開いた口の直径は大物を捕らえるのに十分な大きさになります。口に入ればあとは時間をかけてゆっくりと飲み込むだけです。
図1 フウセンウナギ

図1 フウセンウナギ

図2 フウセンウナギが大きく口を開けたときの骨格の動き : A 閉じた状態 / B : 開けた状態 ( Norman1963より略写 )

図2 フウセンウナギが大きく口を開けたときの骨格の動き : A 閉じた状態 / B : 開けた状態 ( Norman1963より略写 )


獅子舞

ホウライエソ ( 図3 ) やホシエソ ( 図4 ) の仲間は、まるで獅子舞のように頭を前後、左右、上下に動かすことができます。これによって獲物が捕えやすくなります。動きをよくするために前の背骨が退化し、中を走っている紐 ( 脊索 ) だけになっているところがあります。あごを突き出すときには紐をのばし、元に戻すときには紐を緩めて折たたむことができます ( 図5 ) 。それはまた、捕まえたときに獲物の動きによる衝撃を和らげるのに役立っています。
図3 ホウライエソ

図3 ホウライエソ

図4 ホソヒゲホシエソ

図4 ホソヒゲホシエソ

図5 ダイニチホシエソ類の大きく口を開く仕組み : A 上あごをつきだした状態 / B : 上あごを戻した状態 ( Regan & Trewavas1930より )

図5 ダイニチホシエソ類の大きく口を開く仕組み : A 上あごをつきだした状態 / B : 上あごを戻した状態 ( Regan & Trewavas1930より )


恐るべし深海魚

深海魚は獲物の少ない深海で、自分よりも大きなサイズの獲物を飲み込むためにいろいろな工夫をしています。そのために別のパーツを用意するのではなくて、元からあるパーツを使っていろいろな仕掛けが作られています。


※出典
『深海魚―暗黒街のモンスターたち―』
『深海魚ってどんな魚』