Vol. 27 台湾便り2016 その2

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。
前回 ( Vol. 26「台湾便り2016」 ) に引き続き、台湾よりお届けします。

台湾の高雄市近くにある東港 ( トンカン ) 魚市場には、魚が水揚げされるところと小売りの魚屋がたくさん並んでいる市場があります。底引き網で獲れた魚を見た後、ここをよく覗きます。ここには底魚以外に、この辺りで獲れた磯魚などの鮮やかな色の沿岸魚をたくさん見ることができ、楽しいところです。時にはコンニャクイワシ類やサンゴイワシ類などの典型的な深海魚が、タイ、ベラ類、イシモチなどと一緒に堂々と並んでいるのを見るとうれしくなります。日本では見られない光景です。ここでは油で炒めて食べているようです。

トンカン魚市場の沿岸魚2

トンカン魚市場の沿岸魚

トンカン魚市場の沿岸魚

ガンゾウビラメ類

深海魚以外の私の専門はヒラメ・カレイ類の研究です。今回こちらに来たのはこの類の研究・討論会のためです。ここの市場の魚屋ではいつもヒラメ科のガンゾウビラメ類がたくさん売られています。ガンゾウビラメ、ナンヨウガレイ、テンジクガレイ、メガレイなどはいつでも見かけますが、どれもよく似ています。ガンゾウビラメとテンジクガレイは有眼側 ( 目のある側 ) の鱗がトゲを持った櫛鱗で、無眼側 ( 目のない側 ) はトゲのない円鱗です。ナンヨウガレイは両側が櫛鱗です。鱗を調べるのは簡単です。指で触れるだけよいのです。櫛鱗ではざらざらと引っ掛かりますが、円鱗では滑らかです。いつものようにチェックしていると、有眼側が滑らかなガンゾウビラメがいたのです。これは台湾に来てからずっと探していたタイワンガンゾウビラメです。

タイワンガンゾウビラメ

タイワンガンゾウビラメ

タイワンガンゾウビラメと私

タイワンガンゾウビラメは体色や斑紋がガンゾウビラメにそっくりなのですが、有眼側の鱗が体の縁辺の櫛鱗域を除いて円鱗なのが特徴です。この種は1927年に台湾の魚類を研究した大島正満博士によって、ここトンカンで採集した標本に基づいて新種記載されたものです。私は学生時代にこの種を高知県御畳瀬魚市場で採集し、この種が日本にも分布していることを確かめました。このことを学会に来られていたご高齢で、杖を突いておられた大島先生にお話ししたところ大変喜ばれたお顔を今でも思い出します。大島先生はサケマス類の南限種タイワンマスを台湾の高山の渓流から発見されたことでも有名です。昨年、大島先生の没後50周年の記念講演会が厚木市であり、この話を披露したところ、この会を主催されたご一家の方々に、存命中の先生を知る魚類研究者として喜んでもらいました。蛇足ですが、2年前の大河ドラマ『八重の桜』の八重さんと新島襄が幼少の頃の先生を満坊といって可愛がられたそうで、その頃の写真が披露されていました。

というわけで、第27回目は深海魚から少しズレてしまいましたが、台湾で出会った思い出のヒラメをご紹介しました。

台湾には4月末まで滞在予定です。
面白い魚に出会ったら、またご報告したいと思います。