Vol. 5 幻想的なショーの残忍さ:ヘッドライトと暗視野スコープ

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

今回はまずはじめに、下のホウキボシエソの写真を見てください。眼の下のほう、まるで涙がキラリと光ったような、大きな白色斑があるのがわかりますか? これはいったいなんでしょう?

第5回目は、深海魚がもっている不思議な【前照灯】のお話です。

ホウキボシエソ

ホウキボシエソ

前方を照らしてエサを見つける!

ムラサキホシエソ、ナミダホシエソ、カンテントカゲギスなどのホテイエソ類、オオクチホシエソ、マルギンガエソなどのホウキボシエソ類などは、眼の下に三角、楕円、円、三日月などの形をした1個の大きな白色斑をもっています ( 図1、2 ) 。
実はこれも発光器で、エサを探すためのヘッドライトのような働きをしています。白色の光は前方を照らし、ホウキボシエソが放つ赤色の光は暗青色の深海に溶け込んで見えない青色の魚を見つける暗視野スコープの働きがあります。発光器の形や大きさ、光の色は種類によって異なります。
図1 マルギンガエソ

図1 マルギンガエソ

図2 カリブカンテントカゲギス

図2 カリブカンテントカゲギス


ヘッドライトの驚きの仕組み

発光器の奥には袋が付いていて、その中にある発光細胞が光ると、周囲の壁の反射板で反射した光が、発光器の窓から発射します ( 図3 ) 。光の色を変えることができる種類は、窓の表面にフィルターをもっています。筋肉や神経を使って光を点滅させ、強さも調節できます。まるで舞台を照らすスポットライトのようです。
ムラサキホシエソの飼育では発光器の前半のピンク色の部分から鮮赤色を、後半の白色部から鮮やかな緑白色の光を別々にフラッシュしているところが観察されています ( 図4 ) 。用途によって使い分けているようです。

クリスマスが近づき、人間界でもイルミネーションが華やぐ季節となりましたが、深海魚がエサ探しのために放つ光は、深海世界でさぞかし幻想的な光のショーとなっていることでしょう。しかし、それは生きるための仕組み。美しさの先には、おそろしい現実が待っているのです。

図3 オオクチホシエソのヘッドライトの断面図

図3 オオクチホシエソのヘッドライトの断面図

図4 ムラサキホシエソのヘッドライト

図4 ムラサキホシエソのヘッドライト