Vol. 9 今、世間を騒がす深海魚たち① : リュウグウノツカイとサケガシラ

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

最近、深海魚の水揚げのニュースをよく目にします。それにともない、テレビや新聞などで特集を組まれることも多くなりました。私もコメントを求められることがたくさんあります。
リュウグウノツカイ、サケガシラ、フリソデウオ、テンガイハタ……深海でひっそり暮らしていたはずの彼らも、すっかり有名になりましたね。

第9回目は、まさに「時の魚」である、リュウグウノツカイとサケガシラについてお話しましょう。
どんな魚かを知れば、続々と水揚げされる謎も見えてくるかもしれません。

リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイは、体が平たく、細長い帯状で、尾鰭に向かってだんだんと細くなる、タチウオに似た魚です。ただし、口元をとがらせたタチウオとは違い、前頭部はほとんど垂直です。背鰭は頭の前端の上から始まり、前の6本は糸状に、たてがみのように長く伸びています。腹鰭は左右の側面に1本ずつあり、長く伸びて、先端がスプーン状です。体に鱗がなく、銀粉をまぶしたような銀白色の肌には小斑紋が散らばっています。そして、胸鰭を除くすべての鰭が赤橙色をしており、そのコントラストが非常に美しい魚です。この容姿から人魚と思われたのも無理はありません。
 
この魚が人気なのは、神秘的な響きを持つその和名にも理由があるのかもしれません。リュウグウノツカイ ( =竜宮の使い ) とは、なんともロマンティックですね。英名は、oarfish ( オールフィシュ ) あるいはKing of the herring ( キングオブヘリング ) といい、和名に比べ実に味気ないです。前者は腹鰭の先端のスプーン状の特徴 ( =オール ) に由来し、後者はニシンの頭 ( かしら ) という意味があります。


vol9_リュウグウノツカイ

サケガシラ

サケガシラもリュウグウノツカイに似て、体が長く、扁平しています。ただし、背鰭の前の鰭条は長く伸びず、リュウグウノツカイのような特徴的なたてがみはありません。腹鰭も小さくて短いです。体は後半部で急に細くなり、その先に小さな尾鰭が上向きについています。鱗がなく、表面にはたくさんの小さいイボ状の突起があり、体色は銀白。まるで銀粉を塗したような美しさと、淡橙色の鰭が特徴です。
この魚にも、リュウグウノツカイのようなロマンティックな和名が与えられたらよかったのですが、残念ながら、英名のKing of the salmon ( キングオブサーモン ) の直訳がつけられています。全くセンスがみられません。アメリカの原住民は、この魚が捕れたときにサケが豊漁になることから、この魚がサケを連れてくると考えていたそうです。


vol9_サケガシラ

生息場所と泳ぎ方

リュウグウノツカイやサケガシラは、日本の南方海域で、沖合の水深200~1000メートルの中深層域に生息しています。また水温20℃以上の暖かいところが好きなようです。泳ぎ方は実に特徴的で、正確には「泳ぐ」という表現は似つかわしくありません。体を垂直に立てるか、わずかに前に倒し、ほとんど静止、懸垂して「漂っている」と考えられています。鰾はありませんが、体を水っぽくすることで海水とのバランス保ち、頭の前端にある長い鰭をなびかせ、そこから尾鰭の付け根まである背鰭をゆっくり波状に動かして前進しています。
彼らが続々と水揚げされる理由のひとつに、もしかしたら彼らの暮らしている場所と、体の特徴が関係しているかもしれませんね。ということで、この続きは次回、Vol.10でお話しすることにしましょう。


体を立てて泳ぐ様子 : 左からサケガシラ、テンガイハタ、リュウグウノツカイ

体を立てて泳ぐ様子 : 左からサケガシラ、テンガイハタ、リュウグウノツカイ