Vol. 4 鰭が光る:魔法使い ? それともET ?

深海魚通信

みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

深海には、発光する魚がたくさんいます。特に有名なのはチョウチンアンコウ類のルアーですが、ホテイエソ類やトカゲハダカ類など、下あごのヒゲを光らせるものも紹介しましたね(前回までを参照)。実は、深海魚が光らせるのは、ルアーやヒゲだけではありません。第4回目は、【光る鰭】のお話です。

1 ) 胸鰭が光る

 

ホテイエソ類のムチホシエソやミツイホシエソは、胸鰭が光ります。胸鰭に発光器をもつ種は大変珍しいです。胸鰭のもっとも上の鰭条の先端部が肥大して楕円形になり、白くなっています ( 図1~4 ) 。これが発光器です。この胸鰭の発光器を光らせながら動かすと、まるでおいでおいでと招いているように見えます。
陸上動物に例えるなら、胸鰭は腕で、鰭条は指。しかし、指で餌生物を誘っているのか、仲間と交信しているのか、詳しくはわかっていません。恐しい魔法使いのお婆さんの指なのか、それとも仲間を求めるETの指なのか…あなたはどちらをイメージしますか?


図1 : ムチホシエソ

図1 : ムチホシエソ

図2 : ムチホシエソの胸鰭の発光器

図2 : ムチホシエソの胸鰭の発光器

図3 : ミツイホシエソ

図3 : ミツイホシエソ

図4 : ミツイホシエソの胸鰭の発光器  ( ⓒ Morrow & Gibbs 1964より略写)

図4 : ミツイホシエソの胸鰭の発光器 ( ⓒ Morrow & Gibbs 1964より略写)


2 ) 背鰭が光る

チョウチンアンコウ類の頭の背面にある発光器はルアーとして用いられていることは前に述べましたが、このルアーを支えている竿は、実は背鰭の第一番目の鰭条からできています ( 図5 ) 。他の条から離れて完全に独立しているため、竿を自由に動かすことができるのです。長い竿を引き寄せて、その先にあるルアーを口に近づけて、餌生物をおびき寄せることもできます。

ホウライエソ類も背鰭の第一番目の鰭条が長く伸びて、先端にある小さい発光器で好物のエビ類を集めます ( 図6 ) 。


図5 : ミツクリエナガチョウチンアンコウ

図5 : ミツクリエナガチョウチンアンコウ

図6 : ヒガシホウライエソ

図6 : ヒガシホウライエソ


どのようにして進化したの ?

発光する深海魚は、発光させるための特別な部位を備えているわけではありません。ヒゲや鰭など、普通の魚にもあるものを上手く改良して使っています。しかし、どのように進化してきたのかはよく分かりません。進化は実験で再現することはできないからです。  
以前、チョウチンアンコウのように頭にルアーを持ったダルマガレイ科のタイコウボウダルマというヒラメ類の魚を子どもたちに紹介したことがあります。このルアーが大変珍しく、形と色がエビ類にそっくりで、黒い目や脚まで付けています。精巧に作られたエビを餌にして小魚を集めています。このときは、子どもたちに「どうしてこのように進化したのか」と随分詰め寄られ、最後には「このダルマガレイ自身は自分の鰭がエビの姿をしていることを知っているの」との質問でとどめを刺されました。子どもたちの好奇心は、本当に素晴らしいです。 自然界には、まだまだわからないことが多くあります。だからこそおもしろくもあります。