誰? WHO AM I ?
『ラスト サムライ』『バットマン ビギンズ』『SAYURI』等、世界を股にかけて活躍している映画俳優、渡辺謙。彼は今、何を思い、何を表現し、これから何処へ向かおうとしているのか? ??? 本書は、『明日の記憶』という小説に偶然出会ったことで、何かに突き動かされるように映画を作ろうとする一人の<表現者>としての軌跡を、渡辺自らが克明に綴ったノンフィクションである。たった一人の想いを出発点に、やがて多くの賛同者が集まり、一つの作品を形にしていくことの困難、情熱、悲しみ、喜び。そして、役者とは何か? 物をつくるとはどういうことか? 映画の撮影の日々を通じてその本質を突き詰めていくという、いわゆるタレント本の枠を遥かに超えた、手ごたえのある読み物となった。また、今まで決して多くを語ってはこなかった病気のこと(18年前に急性骨髄性白血病を発病)、家族のことなど、私的な部分についても隠すことなく、当時の状況や、想いを振り返っている。そして渡辺自身が、本書の原稿を書いているうちに、なぜ自分がこんなにも、『明日の記憶』を映画にしたかったのか、そのバックグラウンドさえも見えてくるという構成である。