わたし、虐待サバイバー
和田秀樹
幼少期に、親に一貫した愛情を与えられて育った人は、
ある程度、人格に一貫性ができる。ところが、児童虐待を受けた子供って、
ずっと親から殴られて育ってきたように思われがちですが、
ずっと殴り続ける親というのは、ほとんどいないのです。
機嫌がいいときは、子どもにも機嫌よく接するし、可愛いねと抱きしめもする。
しかし、ささいなことで豹変し、子どもに思いきり暴力を振るうとかね。
そういう一貫性のなさが子供に影響するのです。
羽馬千恵
つまり、親にも「一貫性」がなかったということですよね?
よくわかります。わたしの親も、優しいときもあれば、
急に理不尽な言動を浴びせてくることもありました。
子ども側としては、どれが社会常識として正しいものかもわからなくなるし、
愛情もときには十分感じたりもするので、いくら理不尽な虐待をされても、
それすら愛情かと思って混乱するのです。
だから、子ども側からSOSを出しにくいのだと思います。
それが、大人になって社会や他人の親と言うものを知って、
自分の親がしてきた行為が、愛情ではなかったのだと気がつく。
そこで絶望をする。だから、親に激しい憎しみが湧き出すのも、
大人になってからの方が多いのではないかと思います。
(本書 対談より)
虐待サバイバー……親から虐待された経験を持ち、なんとか生き延び大人になった人
親から離れ自立しても、過去のトラウマは消えてはくれない。
愛を試し続け、心は何度も壊れ、就職も難しく、
死と隣り合わせで今日を生きている。
人とのつながり方が、わからない。人を信じることが、怖い。
36歳の彼女が、壮絶な少女時代を振り返り、数々の精神疾患に苦しみながら、
それでも書きたかった想いとは?
こうして「虐待」は始まった。
経済力のなかった母
愛情に包まれた柔らかな暮らし
幸せの雪うさぎ
母の再婚
妹が生まれて、変貌する家族
「人間は年齢ではない」と思い知らされた
妹を憎たらしいと思った日
俺はおまえの本当の父親じゃない
第2章
「離婚」「貧困」「再婚」「虐待」でぐるぐる。
優しかった母までもわたしを傷つけた
離婚――最後にわたしを抱きしめた義父
食パンの耳で生き延びろ!
12歳で自殺を考えた
逃げ場がなくて頭が混乱していく
勉強の楽しさを教えてくれた、はじめての友達
母さん可愛くなったやろ
父親は、もういらない
くだらない!教員たちのファンタジー
第3章
愛着障害~精神崩壊へのメルトダウン
再び不登校になり、高校は中退
大学進学後、さらに精神を病んでいった
お父さんがほしい!「愛着障害」からトラブルに
恋愛感情って何ですか?
新たな依存先を求めて漂う
自殺未遂から医療保護入院に
閉鎖病棟での冷たい日々
人間を一番脅かすものはなんだろう
複雑性PTSD
第4章
大人になってもトラウマは続く!
人生を受け入れるために、わたしがしたこと
就職活動に失敗しアルバイト生活の日々
社会が求めているのは結局、「ふつうの人」だった
25歳、生活保護に頼るしかなかった
生活保護者は、病院を選べないんですよ!
職場はお父さん天国か、それとも地獄か
もう大人なのに……と言う医者
異常者だから近づくな……村八分になる
それでも、前に進みたい
第5章
母の物語から見える虐待の連鎖
「お前の方がマシ」という母のトラウマ
支援のなかった時代はそう昔ではない
母に似ていく自分が悲しかった
「赤ちゃん日記」をつけていた
わたしに起きたある〝変化〟
第6章
解離――虐待がもたらした大きな爪痕
虐待サバイバーの「病の来歴」
わたしが攻撃的人格に変わるとき
顔つきも、雰囲気も、口調もすべて別人に
加害者への治療と支援が必要な理由
虐待サバイバーは、悲しい別れを繰り返す
対談
和田秀樹×羽馬千恵
虐待サバイバーたちよ、この恐ろしく冷たい国で、熱く生きて行こう!
おわりに
虹色で、いい。