Vol. 8 望遠? 管目? 樽目? : 特殊な目を持つ深海魚




みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

早いもので、2014年も3カ月が過ぎようとしています。寒い日々もようやくひと段落、これから日差しのまぶしい季節を迎えますね。
ですが、そんな日差しとは無縁の世界に生きている生物も、地球上にはたくさんいます。例えば、深海で暮らす魚たち。彼らはどのように周囲を見て、仲間やエサを見つけているのでしょう?

第8回目は、深海で特殊に進化した、おもしろい目を持つ深海魚のお話です。



ボウエンギョ=望遠魚 チューブアイ=管目魚

ボウエンギョ科のボウエンギョは、望遠鏡のような目を持った魚です ( 図1 ) 。ボウエン=望遠という、そのままの名がついています。スタイルフォルス科のスタイルフォルス コルダタスは、管の先に目を持った魚( 図2 )。和名はありませんが、英名はチューブ アイ ( tube-eye ) といい、そのまま訳すと「管目魚」です。  いずれも体が細長く、頭から前方に伸びた筒の先に目をつけていて、まるで望遠鏡のようです。何かに似ていると思ったら、新型の自動車のヘッドライトでした。この望遠眼は、エサの少ない深海で遠くのエサを見つけるのに優れています。


図1 ボウエンギョと目のアップ



図2 スタイルフォルス コルダタスと目のアップ




和名では「出目」 英名では「樽目」?

デメニギス科は日本ではデメ=「出目」とつきますが、英名は ( barrel-eye ) といい、「樽目」の意味があります。この類には、斜め上向きに置いた樽の蓋に目をつけたクロデメニギスや、金魚のチョウテンガンのように上向きで、そしてデメキンのような樽の上に目をつけたデメニギス、ヨツメニギス、ヒナデメニギスなどがいます ( 図3 ) 。 デメニギスの目は飛行機のコックピットのような透明なカプセルの中に収まり、まるで操縦席に座っているかのようです。カプセルの中は透明なゼリー状の物質で満たされ、目を衝撃から守っています。


図3 デメニギス ( 上 ) とクロデメニギス ( 下 )



探索眼と捕獲眼の両機能をそなえたデメニギス

標本の観察から、デメニギスの目は上向きであり、上を見るのに適した目だと考えられていました。ところが最近、モントレー水族館付属研究所の潜水艇 ( ROV ) が生きたデメニギスの捕獲に成功し、水槽で泳がせたところ、目を上から前へ回転させていることを発見! 上方に獲物を見つけると、体の向きはそのままで、目だけをすばやく上方から前方に、つまり口の方向に回転させて、見事にエサを捕まえたのです( 図4 )。  つまり、探索眼と捕獲眼の両機能をそなえていたことがわかりました。深海魚にはいろいろな面白い工夫が見られてとても楽しいですね。その中には我々が利用できる有用なアイデアがたくさん隠されているかもしれません。


図4 デメニギスの目の動き

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