Vol. 17 めでたい深海の七福神




2015年、あけましておめでとうございます。
尼岡邦夫です。

みなさん、どのようなお正月をお過ごしですか。1年の幸せを願って、七福神巡りをされた方もいらっしゃるかもしれませんね。

七福神といえば、恵比寿、大黒、布袋、弁天、毘沙門、寿老人、および福禄寿ですが、実は深海にも、そんなめでたい神の名をもった魚がいます。さて、どんな神がいるでしょうか。探してみましょう。



深海のエビス様

エビスとつく名前の魚には、エビスザメ、エビスガジ、エビスシイラ、エビスダイなど10種以上いますが、残念ながらほとんどは深海魚ではありません。ただ1種、「エビスハダカ」という名の深海魚がいます。よくよく考えると、「エビス様をハダカにする」なんて失礼な話ではありますが、ハダカイワシ科の魚なので許すことにしましょう。
ハダカイワシは通常、細長い体で顔もシュッとしたものが多いですが、このエビスハダカは体が高く、ずんぐりしていて、その前端に大きな眼がついているのが特徴です。腹面の黒い輪は発光器です。日中は水深175~600メートルにすみ、夜間は300メートルよりも浅いところに浮かんできますが、もっとも深いところでは2121メートルの深さで捕れた記録があり、これぞ「深海魚」という感じですね。
しかし、この魚に「エビス」という名がついた理由は、よくわかっていません。

エビスハダカ



深海のダイコク様

同じくハダカイワシ科に、「ダイコクハダカ」という魚もいます。エビスハダカと同じく体はずんぐりしていますが、頭は非常に高く、頭長とほとんど同じです。後頭部が盛り上がっているので、大黒様が担いでいる大きな袋を連想させます。頭の前端の白い部分は発光器です。ハダカイワシ科には、恵比寿様と大黒様がそろっていて、なんともお正月にふさわしい科です。
ダイコクと名のつく深海魚には他に、水深500メートル以浅にすむ「ダイコクサギフエ」がいます。体が薄くて、頭の後部が盛り上がった姿は、やはり大黒様の担ぐ袋のようです。吻は管状に伸び、先端に口が開きます。背びれ第2棘は長く伸びています。サギフエと同種とする研究者もいて、私の本では「サギフエ」として紹介しています。 

ダイコクハダカ


サギフエ



深海のホテイ様

深海のホテイ様は、「ホテイエソ」、「ヒレグロホテイエソ」、「ハダカホテイエソ」の3種がいて、いずれもホテイエソ科の魚です。36種を含む深海を代表する科で、科名に神の名がついた、とてもめでたいグループですね。
ホテイエソは布袋様のような大きく膨らんだお腹が特徴で、水深50~1100メートルの中深層にすんでいます。体が長く、真っ黒で体表に発光器があり、眼の下に大きなヘッドライトをもっています。下あごの先端からひげがぶら下がっています ( 写真では隠れていて見えません ) 。
その顔が、ちょっと笑っているようにも見えますが、それも布袋様らしいです。

ホテイエソ




他の神様は深海がお嫌い ?

他の神様を探してみると、深海ではありませんが、まるで弁天様の羽衣のような大振りなひれを持った、「ベンテンウオ」という魚がいました。2014年11月に富山湾で水揚げされ話題になったときには、その珍しさから深海魚と報じたところもありましたが、残念ながら100メートルより浅いところにすんでいます。  また、毘沙門、寿老人、福禄寿も探してみましたが、そのような名のつく深海魚はみつかりません。深海がお嫌いなのか……はたまた、広い深海のどこかに、そっと身を隠しておいでなのかもしれませんね。今度現れたら大歓迎してあげましょう。全員そろうことを期待しながら、今年は深海魚の発光パワーで世の中を明るく照らし出したいものです。


※出典
『深海魚ってどんな魚』

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