Vol. 22 フクロウナギの親と子




みなさん、こんにちは。

尼岡邦夫です。

以前、信じられないほど大きな口を持つ深海魚として、フクロウナギをご紹介しました(「Vol. 19 頭より大きな口の魚」参照)。このおかしな深海魚について、もう少し詳しく知りたいとの質問が寄せられましたので、もう一度解説したいと思います。

第22回目は、大きな口だけじゃない、フクロウナギの奇妙な特徴のお話です。



フクロウナギってどんな魚 ?

フクロウナギは日本では岩手県、宮城県などの東北地方の太平洋以南の日本の各地でばらばらと捕れていますが、一度にたくさん捕れることはありません。世界の海域の水深500~7800メートルの深海にすんでいます。



袋状の口と小さな粒目

前に述べたように、フクロウナギは頭より大きな口を持っていますが、その口にある袋状のものは「口腔咽喉嚢 ( こうこういんこうのう ) 」と呼び、深海魚ではほかにウケグチザラガレイなどがこの袋を持っています。みなさんがイメージしやすいところでは、鳥のペリカンの口の袋もこれです。この袋を折りたたむと、体つきは細長いウナギのようです。 小さな粒目が頭の先端につき ( 「Vol. 12 目無 ? 奥目 ? 粒目 ? : 目をなくした深海魚」参照 ) 、背びれと臀びれの基底は長くて尾端まで伸びていますが、尾びれと腹びれはありません。体は全体に真っ黒で、鱗がなくて、皮膚は非常に剥がれやすいです ( 図1 ) 。



図1 フクロウナギ



しっぽの先がなぜ光る

尾部はむちのようにだんだんと細くなり、その先は白くなっています。これは尾器官と呼ばれる発光器官です ( 図2 ) 。何のために使っているのかはわかっていませんが、大口へエサをおびき寄せる装置として働いているとすれば大変おもしろいですね。これは私の期待に過ぎません。 図2 フクロウナギの尾部の先のルアー ( Nielsen & Bertelsen1985より )




親が不明の子ども

子どもは奇妙な親の格好とは全く違った別の奇抜な形をしています。体はゼラチン状で扁平、レプトセファルス型です。これはウナギの仲間の証です。ウナギでは体は細長い柳の葉っぱのようですが、この子どもはきわめて高い楕円形をしています ( 図3 ) 。発見されたとき親が不明の新種としてレプトセファルス シュードラティシムス ( Leptocephalus pseudolatissimus ) という学名が与えられました。その後、何の子どもであるか、たくさんの候補があがりましたが、フクロウナギの子どもであることが判明しました。この親にしてこの子ありなのです。 図3 フクロウナギの子ども ( Bertin1938より ) 図3 フクロウナギの子ども
( Bertin1938より )


※出典
『深海魚―暗黒街のモンスターたち―』
『深海魚ってどんな魚』

シェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事