Vol. 25 深海の鬼




みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

深海魚の英名をよく見ると、「Devil ( デビル ) 」とつくものがたくさんいます。これが和名では、直訳の「アクマ ( 悪魔 ) 」ではなく、「オニ ( 鬼 ) 」と変換されるものが多く、実に日本人らしいなと思います。

ところで、今月は節分がありました ( 2月3日 )。
地上の鬼も大活躍だったと思いますが、ここで深海の「オニ」も紹介してみたいと思います。
少々遅くなりましたが、海の奥深くからお届けするため、多少の時間差をお許しください。



これぞまさに、“深海の鬼”

鬼のイメージといえば、頭の上にある角、および大きな口とそこから覗いている牙、そして恐ろしい顔ではないでしょうか。そのすべての特徴を持ち合わせているのが、オニアンコウ ( 図1 ) です。頭のてっぺんに1対の鋭い棘があり、口からは数本の鋭い牙が覗き、恐ろしい鬼そのものです。 図1 オニアンコウ


さらにオニアンコウの仲間には、なんと名前に「悪魔」と「鬼」が両方入った、アクマオニアンコウ ( 図2 ) というものもあります。図2 アクマオニアンコウ 図2 アクマオニアンコウ


オニアンコウには敵いませんが、オニキンメ ( 図3 ) も大きな口と鋭い牙が鬼のように恐ろしく、その名に恥じない迫力です。図3 オニキンメ 図3 オニキンメ




「鬼」と呼ぶには… ?

しかしオニハダカ ( 図4 ) 、オニヒゲ ( 図5 ) 、オニスジダラ ( 図6 ) にはそのような特徴は見られません。
ただ、オニハダカは頭の後端近くまで裂けた大きな口をもっています。オニヒゲは頭がごつごつして怖そうな感じがします。
よくわからないのはオニスジダラで、一見優しそうな顔つきです。名づけた人に尋ねたいものです。近縁種のスジダラ ( 図7 ) と比べてみれば、多少「鬼っぽい」でしょうか… ? 
図4 オニハダカ ( 藍澤正宏 )


図5 オニヒゲ


図6 オニスジダラ

図7 スジダラ


※出典
『深海魚―暗黒街のモンスターたち―』
『深海魚ってどんな魚』

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