Vol. 29 台湾便り2016 その4



みなさん、こんにちは。
尼岡邦夫です。

一ヶ月半におよぶ台湾生活も4月26日に終わり、日本に戻って数日が過ぎました。数回にわたってお届けした「台湾便り」は楽しんでいただけましたか ?
そのなかで、私の専門は深海魚以外にヒラメ・カレイ類であることをお伝えしましたが ( Vol. 27 「台湾便り2016 その2」参照 ) 、台湾に滞在中、ある思い出の魚と出会いました。
第29回目は、台湾便りの最終回。懐かしい東港 ( トンカン ) 魚市場に思いを馳せながら、大変興味深い「ボウズガレイ」という魚についてお話したいと思います。


トンカン魚市場のトロール船


水揚げされた深海魚


深海魚を採集中の私



お前はカレイか ? それともヒラメか ?

ボウズガレイは日本にはいない魚です。ボウズガレイというからには「カレイ類」なんだろうと思ったら、この魚に関してはそう単純なお話ではありません。なぜなら、目が体の右側にある「カレイ型」と左側にある「ヒラメ型」が半々いるのです。果たしてこの魚は、カレイなのでしょうか ? ヒラメなのでしょうか ?  ボウズガレイ



カレイ・ヒラメのご先祖様

面白いことに、背鰭は頭の後ろの方から始まり ( ヒラメは眼の上から始まる )、頭の上に鰭がありません。その様子から、「ボウズ ( =坊主 ) 」と名前がつけられたようです。
また、前の鰭条は棘 ( ヒラメは柔らかい軟条 ) です。腹鰭にも棘があります。
このような特徴はスズキやタイに見られるもので、さらに上の目が頭の上にあるのも普通のヒラメ・カレイ類とは異なります。そのため、ヒラメ・カレイ類の祖先型であると言われています。 
学生時代、外国に簡単に行けなかったので、この魚を解剖したくて入手するのに大変苦労したことを思い出します。解剖の結果は骨の特徴もスズキに近かったです。そんなことを思い出しながら今回1尾を購入しました。



ワニガレイの口

御存知の通り、私は深海魚も専門としていますので、深海ガレイのお話もしましょう。
深海ガレイの代表といえば、ワニガレイです。大きな口は頭の後端付近まで開き、下あごの前端に大きな牙状の歯が突き出しています。これこそまさに深海魚の貫禄です。面白いことに上あごの先端は頭よりも前に突出しています。下あごの前端に巨大な牙があるので、口は閉じられません。ホークのように使って泥の中にいる小動物をかき出して食べるのでしょうか。
こんな変な魚を見ていると、なぜもう少し早く生まれてこなかったのだろうと残念でなりません。というのも、この魚の原産地 ( 初めて獲れたところ ) は、私がよく通っていた高知県の御畳瀬魚市場なのです。私が先に見つけたかった…… !
その後、台湾、オーストラリア、インド洋からも捕れています。大変珍しい種類で、今回の調査では捕れませんでした。
ワニガレイ


※出典

『深海魚―暗黒街のモンスターたち―』

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